【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
《さて、町を目指す柚月ちゃんと彼方くん。だけど町にはいくら歩いても到着しません。何故ならその森には、魔法がかかっていたからです》
「ま、魔法!? 魔法っていったい……」
「……柚月、俺から絶対に離れないで」
繋いでいた手に、グッと力をこめる彼方。
その表情はとても緊迫しており、辺りをキョロキョロと見回している。
「なにかが来る……っ」
「な、なにかってなんなの彼方?」
「たぶんこの気配は、魔物の類いか……」
「魔物!?」
魔物とか出るのこの世界!?
得たいの知れない物に恐怖を感じ、できるだけ彼方に身を寄せる。
そして突然、横の茂みがガサガサと音をたてたのだ。
──なにか、いる。
《柚月ちゃんと彼方くんの目の前に現れたのは、この森を支配している魔法使いの真壁先生でした》
「ご紹介にあがりました真壁です。近衛さん、一色くん、怖がらせるつもりはなかったのですが、本当にすみません」
「真壁先生!?」
本当に、真壁先生だ……。
白いローブを羽織り頭には魔法使い特有の帽子を被っていて、真壁先生の背よりも大きな杖を右手に持っている。
なんというか、絵に描いたような魔法使いだなぁ……。