こっち向いて笑って、先輩!
「っ、」
先輩は名前を呼ばれて振り返ってから、少し驚いた顔をして私を見た。
「せ、先輩!あの!先輩ですよね?!学級旗紹介の放送!」
「……」
なにも言わずにパイプ椅子を3つ一度に運ぼうとする先輩。
私から目を逸らして、まるでさっきの声が聞こえていなかったみたいに。
でも、その仕草が余計、私を期待させてしまうんだよ。
だって、違うなら違うってすぐ言えばいいのに、それをしないんだもん。
嘘がつけない人なんだ、って。
また余計好きになる。
「あっ、手伝います!」
パイプ椅子を持つ先輩にさらに近づいて、鉄パイプに触れる。
「は?頼んでない」
「いやでも……そうしないと、私が先輩の隣にいていい理由ができないというか……!手伝わせてくださいっ!」
そういうと、はーっとため息を漏らした先輩は「ほら」と一脚だけ私に差し出した。