こっち向いて笑って、先輩!





「あれ、桃〜?どこ行くの?」


「えっ、あっ、ちょっと、トイレに……」


「あんたさっきも行かなかった?」


ぎくっ!
お風呂を終えて、部屋でみんながゆっくりと過ごす時間。クラスメイトに声をかけられてしまった。


普通のホテルとは違って、あくまで自然と共同がコンセプトの少年自然の家であるこの施設、トイレは部屋を出て少し歩いたところにある。


だから部屋の外に出る口実としては完璧、と思っていたけれど。


「もしかして、こっそり誰かと待ち合わせとかしてんの?」


「え!まじかよ、なに。桃ついに告白された?!」


やばいぞやばい。みんなに本当のことがばれて騒がれたら先生たちの耳に入っちゃうのも時間の問題な気がする。


「あっ、えっと……全然そんなんじゃなくて。私環境変わるとお腹痛くなったりするんだよね。体が緊張してるみたいで」


「へ〜。なんだほんとうに腹いたか」


「ひどくなったらすぐに言いなよ?保健の先生のところ連れて行ってあげるから」


「あっ、うん、ありがとう!とりあえずもう一回行けば大丈夫と思うから」


私はそう言って慌てて部屋を出た。


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