こっち向いて笑って、先輩!


「如月せんぱ〜い!」


班の女の子に名前を呼ばれて、先輩の手が私から離れる。


「ほらっ、先輩早く行ってきてください!私は大丈夫ですし!あの、野村先輩も、わざわざ来てくれてありがとうございますっ」


如月先輩とは目を合わせないまま、野村先輩にそういう。


「おう。大事に至らなくて良かったよ。和那、行くぞ〜。またね、桃ちゃん」


「はい。また」


「……」


「和那ぁ〜?行くぞ」


先輩がどんな顔で私を見ていたのかすごく気になったけど。今はうんと苦しいほうが大きい。


ちゃんと聞かないと前に進めないことはわかっているけれど。噂とはいえ、同級生の川越先輩が言うんだ。如月先輩に彼女がいるなんて絶対本当の話だし。


寄りを戻したってことは、前に付き合ってたってことだよね。


どうしよう。
すごく嫌だなって、思っちゃってるよ。
こんな風に思っている今の自分がいることが一番、嫌だ。


「来原、」


落ち込んで俯いていると、誰かに声をかけられた。



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