こっち向いて笑って、先輩!





「ったく〜来原ほんっとドジだな〜」


職員室に入って、担任の先生に鍵を返して状況を説明するとため息混じりにそんなことを言われた。


「す、すみません」


「まぁ、無事でよかった。じゃあ、気をつけて帰れよ〜」


本当に『無事でよかった』なんて思っているんだろうか。絶対、私に仕事頼んだこと自体忘れてたんじゃないの。


イスごとクルっと回った先生の背中を見つめる。


「それちょっと違うんじゃないですか」


え?


少し後ろの方で私と先生のやり取りを見ていた如月先輩が突然口を開いた。


「ん、なんだ如月」


成績優秀、スポーツ万能、副生徒会長の如月先輩のことなんて、この学校の誰もが知っている。


もちろん、今年赴任してきて初めて1年生を受け持つ私の担任だって。


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