どんな君でも愛してる。



「うわぉぉー!!窓閉めろって!!」
「花びら入ってくんじゃん!」

その日は風が強かった。
花びらが舞い、晴れた空は暖かさを運んでくる。

「ひーろー、この机、誰のやー??」

関西弁が混じったポニーテールの背の高い筋肉質の女子は、席をバンバン叩いた。

「知らねー。朝来たら置かれてたんだ。」
「へぇー!!転校生でも来るんかな?!」

声をかけられたのは、昨日まで無かったはずの机の前の席に座る男子。

「さぁな。それよりちー。くま置いてきたのか?」
「祐信は今日、自主練するとか言うて先走ってったでー。」

男子生徒の隣の席に女子が座ったタイミングで、チャイムが鳴った。

騒がしい教室のドアが、ガラガラ引かれる。

「はよー」

だるそうに入ってきた先生は、教卓に立つと、大きなあくびをする。

「先生ー!!寝癖酷すぎ!!」
「え?」
「髪立ってんぞー!!」

先生に飛び交う声は、親しみが込められていた。

「あーもう。お前ら、俺の寝ぐせなんかどーでもいいんだから。今日はそれより見といたほうがいい奴、連れてきたぞー」

そう言うと、先ほど入ってきたドアから出た先生は、1人の女の子を引き連れて戻ってきた。

真っ白い肌、不思議な色をした大きい目、人1倍低い背……
トランクケースを引き、スクールバックを肩にかけて女の子は一礼する。

騒がしかったクラスが、静まり返った。

「はい。名前書いて自己紹介。」

チョークを渡されたその女の子は、精一杯の背伸びをして文字を書いていく。

「丸真冬です!よろしくお願いします!」
「まるちゃんは都合でみんなより3週間遅れて入学してきた。海外に住んでて、今日引越ししてきたから大荷物だ。今、あと3つのトランクケースをくまに運ばせてるとこ。」

クラスの半数以上が、先生の話に耳を傾けていなかった。

視線は、この新しいクラスメイト真冬の集まっている。
こんな可愛い帰国子女がクラスにやってくるとは誰も思ってもいなかったのだ。

「悪いけど、今日だけ後ろに置いとかせて。あとはー仲良くしとけ、くらいか。」

真冬は、ニコニコとした笑顔でクラスを見ている。
その笑顔に真っ先にヤられたのは、先ほど、昨日までなかった席に気づいた女子生徒だ。
見た目に遭わず、小さくて可愛いものが大好きな彼女は、今にも真冬に飛び込んで行きそうな雰囲気を出している。

「まるちゃんに質問あるやつは、後で聴きに行けー。まるちゃんはあのでかいヤツの後ろ。ほら、頬杖ついて今にも寝そうなやつ。」

指を指されたのは、空いた席の前に座る男子生徒。
数秒の間、2人の目が合った。
男子生徒は目をそらさずに見詰め替えす。

なんだろう、この吸い込まれる目……
丸真冬……だっけ……

先に視線を外した真冬は、机と机の間をトランクケースと一緒に通り抜ける。

「じゃぁ、来てないやつはくまだけだな。今日の連絡は特にない。お前らはー?」
「ありませーん。」
「んじゃ、解散。勉強の質問あるやつこーい」

梶先生が手を1度叩くと、クラス中は一気にうるさくなった。
全員の視線は、真冬に向けられる。



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