私と結婚してください。



「…なぁ、頼ってさ
本当は希依ちゃんのことどう思ってんの?」


俺のこの質問に、頼は顔色ひとつ変えず

「もちろん、大切な友人です」

間髪空けずにそう答えた。


「本当にそれだけ?」


でも、そう聞いた俺の言葉にこれまで全く動じなかった頼が、部屋から一歩でてドアを閉めた。


「神崎さんは、今でも希依さんのことが好きですか?」

「…あぁ、好きだよ」

「以前、希依さんから希依さんの気持ちを伝えられませんでしたか?」

「好きだったら、頑張ったっていいんじゃねーの?俺だって」

「そうでしょうか」

「…は?」

「希依さんのことを本当に大切に思っているのなら、希依さんの恋路を邪魔することなんてできないんじゃないでしょうか。

本当に大切に思っているのなら…
相手の幸せのために自分を犠牲にする覚悟も受け入れられるものではないでしょうか」

「……ってことは、やっぱり頼も希依ちゃんのこと…」


本当は希依ちゃんのことが好きだけど…希依ちゃんが凰成を選んだから、身を引いてるってことか…?


「神崎さんが感じているものは確かに恋かもしれません。ですが
子供のようにすがり付いていたら、好きな人を失うこともあるということを、あなたも知っているはずです」


その言葉に、遠い昔のことを思い出した。


「……そういや、そんなこともあったな」

「私は希依さんの笑顔が好きです。
…もちろん、伊織様も、神崎さんもですが

神崎さんはとうですか?希依さんと、それから
吉良さんの幸せそうに笑ってるのが、好きではないですか?」

「……なんで、凰成?」

「それはもちろん
あなたの一番のお友達ですから」

「…はは、それ俺がいってたらちょっとやばいやつじゃん」

「吉良さんも言わないだけで、そう思っていますよ。
だからこそ、今あなたに希依さんを譲っているんですから」

「…は?」

「吉良さんも、大切な人には笑っていてほしいんですよ。
ただそれだけです」



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