私と結婚してください。



気まずかったの、私だけ…?

凰成はいつもどおりの声で、いつもどおりのトーンで普通に話しかけてきた。


「頼ってさ、なんで希依のこと名前で呼ぶんだろうな」

「え…、友達だからじゃない…?」

「でも、俺も竜司も友達じゃねぇの」

「あ、そか…
じゃあ、最初の頃私が名前で呼べって言ったからかな」

「それ、俺も竜司も言ったことあるんだけどな」

「え、そうなの?
じゃあなんで…」


そういえば、頼くんって私と伊織くんくらいしか名前で呼んでないなぁ…
ってか他に共通の知り合いがいないから、私にはよくわかんないな…


「…なんでだろうね。
あとで聞いてみる」

「別に、聞かなくていいわ」


あ、そうなの?別にいいの?

なんて思ったら、ケトルのお湯が沸いて


「そっか」


私はまたティーポットに目を向ける。

なんて、凰成に背中を向けた途端
後ろから、私の体に凰成の腕が絡み付いた。


「お、凰成…っ?」

「よくわかんねぇけど
お前が頼といると、なんかすっげぇ腹立つ。

だから、もう頼と2人になんなよ」

「え?」



え、もしかして…嫉妬、ですか?
…凰成が?あの普段は自信満々の凰成が、嫉妬…?


「……ふふ」

「なっ、なに笑ってんだよ」

「いやだって
凰成もかわいいとこあるなぁって思って」

「は?いやどこがだよ」

「凰成も妬いたりするんだね!」

「…焼く?は?」


……は?
え、まさか、もしかして

嫉妬、知らないんですか?


嘘でしょ?
そんなことすら知らないの?ねぇ。


「…まぁ、凰成は知らなくてもいっか」

「は?なんだよ、教えろよ」

「必要になったらね!
ほら、紅茶のも!」


なんか、単純だな。私も。
玲子さんとのことを聞いて不安になって
頼くんと散歩のこと怒られると思って落ち込んで

でもたったあれだけのことで、私の心は軽くなる。


恋って、なんかすごいな。


「あ、今日のうまい」

「え、本当?よかった!
昨日玲子さんからもらったんだけど凰成嫌いかもって言ってたから心配してたんだ~」

「…なら玲子もそれより俺が好きそうなの買ってこいよな」

「凰成は好みがうるさいから面倒なんだって」

「…そ。
でも俺は希依が淹れるやつが好きだわ」


もう、この笑顔で
こんな言葉が聞けるだけで

…そんな凰成のそばにいられるなら、なんでも頑張れちゃうもん。



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