私と結婚してください。
「よく、気づきましたね。
私の気持ちに。
表には出さないようにしてたんですが」
「いやまぁ、なんとなくだよ。
実際今だって頼が本当は希依のことをどう思ってんのか、よくわかってねぇし」
たぶん、普通に好きだとは思うんだけど、よくわかんねぇ。
ただなんとなくいいなって思ってる程度なのか、本気ですっげぇ好きなのか…
こいつ、いろんなことがわかりにくすぎるし。
「……それは、私自身もよくわかっていません」
「は?そうなの?」
「はい。ただ今までにない感情ではあるので、自分自身ちょっと戸惑っています。
…吉良さんは冷静なんですね。希依さんに好意を持つ相手に対して」
「別に、冷静なわけでもないだろ。
ただ今面と向かってるのが頼だからなだけ。
実際頼が希依と2人でいるとこみたら腹立つわけだし」
きっと、相手が頼じゃなきゃもっとどうにかしようとしてんだろうけど…
頼相手じゃ、頼のことも大事なわけだし。希依のことも大事なわけだし。
どうすることも俺にはできない。
「……おそらく、私が考えていることは吉良さんと同じです。
だからこそ、私の気持ちなんて無視でいいです。
吉良さんと希依さんが幸せそうなら、それで私は満足です」
「…そ。
なら俺はもうこれ以上言わない」
「言わせない、の間違いでは?」
そういってクスクスと笑う頼を見てると
こいつには敵わねぇなって、つくづく思う。
なんでもお見通しっていうか、なんていうか…
「ってか昔も言ったけど
なんで俺と竜司のこと名前で呼ばねぇの?」
「ただの癖ですよ。
私の両親が吉良さん、神崎さんと呼び、私も幼いころから両親にお二人のことをそう呼んでいたので、そのまま呼び続けて癖になっているだけです。
特に深い意味はありませんよ。
伊織様のことも、伊織様の世話人たちがそう呼んでいるのでそれがそのまま身についてしまっただけですし、希依さんのことも初期の頃本人から名前で呼ぶように言われたのもありますが、吉良さんや伊織様が名前で呼んでらっしゃるのに耳が慣れてしまっただけかと思います」
「……そんだけの理由?」
「はい、特に深い意味はありません。
この年齢から吉良さんのことを名前で呼ぶのも、お互いにくすぐったいとは思いませんか?」
……頼が凰成さんとか呼ぶの、確かに今さら…
「確かに、今まで通りでいいわ」
「とくに不自由もありませんしね」