私と結婚してください。
「私には、君たちの話はただ仲がよくて、現状を壊されたくないから頼にもやめてほしくないし、神楽も壊すなというただのわがままにしか聞こえないんだよ」
「あの、あなたはどうして神楽を解体しようと考えたのですか?」
どうしても黙っていられなくて、私はそう問う。
答えなんかわかりきっているけど。
「……神楽ができてから、頼との信頼関係が崩れ始めたからだ。
無断外出もそうだが、家に顔を出す回数も激減した。
以前なら我が家で遊ぶこともあれば、食事だけでも帰ってくることは多かった。
でも、3年生になり、神楽に入ってからは家に帰ることもなく、私との約束すら守れていない。
君にはわからないかもしれないが、頼や伊織くん、吉良くんみたいな大きな屋敷の子供はいつどこで誰に誘拐させるかだってわからないんだ。
だからこそ無断外出は禁止していたし、いつだって車を手配できる環境にしてある。
親として、子供の安全を守るのは最優先だ。
子供の成長を見守ることも。
神楽という場所は、それを邪魔する。
だから頼をそこから離そうとした。
親として、当然のことだ」
「すべては頼くんのため、ですか?」
「そうだ」
「ではなぜ、頼くんの気持ちを聞かないんですか?」
「頼の気持ちは聞いてる。
だからこそ、頼が辞めるなら神楽解体はやめようかと話を進めているんじゃないか」
「そうじゃなくて!
頼くんの心の声に耳を傾けてほしいんです!
頼くんは本当はどうしたいのか
本当の気持ちに、耳を傾けてくれませんか?」
「…頼の気持ちは、私が一番よく知ってる。
頼はいつだって親である私たちを信頼し、間違いがないと思うからその通りに生きてきたんだ!」
「それはあなたの意見です!
本当に今、頼くんが考えていることを聞いてみてほしいんです!
……もしそれで、本当に頼くんが神楽をやめたいと考えているなら、私は頼くんの意見を尊重します。
お願いします。頼くんの本音に、耳を傾けてください。
お願いします」
私はそう言って、頭を下げた。
「っ、頼!!」
だけど、その伊織くんの声に、私はすぐに頭を上げた。