気まぐれ猫くんの手懐け方

鞄からハンカチを取り出し、玲央くんの首筋にそっと伸ばした。


「!?」

「あ、ごめんびっくりさせちゃったね」


そっと手を引っ込めると、玲央くんはそんな私の手首をつかんで笑う。


「や、サンキュ」


そして私の手ごと、自分の汗を拭った。


「これ、洗濯して明日返すわ」

「え、いや、このままでいいよ?」

「んなわけにいかねえだろ?」

「うー、じゃあ…お願いします……?」

「なんで疑問系なんだよ」


シャイニングスマイルで、玲央くんはまた歩き出した。


「ほんと、かわいい」

「…!!!?」


また変なこと言ってるこの人!!!

ボボボッと顔が熱くなり、思わず下を向こうとしたときだった。


「また行こうな、陽愛」

「う、ん…!!」


おかしい。

玲央くんが私をかわいいなんて。

…絶対におかしい。


とくんとくんとリズム良く鳴る鼓動を感じながら、私はずっと、下を向いていた。



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