愛すべき、藤井。

「そうだけどさ〜!でも、私めっちゃくちゃ勇気出したんだよ?なのに、藤井のやつ……」

「まぁ……あんた達の場合、恋愛に発展するのはまず難しいだろうね〜」


隣の席のイスを私の机まで持ってきて隣に座った坂部 梅花《さかべ うめか》、通称 うめは私を諭すように口を開いた。


「と、言いますと?」

「だって、あんた達……ずーーっと仲良しじゃん。しかも、中3の変な時期に転校してきた藤井に初めて声かけたのが夏乃なんでしょ?」

「……んー。私は覚えてないけど、藤井はそう言ってたよね〜。でも、それと私たちの関係が恋に発展するのが難しいのはどう関係してるのよ?」


ぶーっと不貞腐れた私に「ひっどい顔」と毒を吐いたうめは、中学から一緒の大親友。


そして、さっきからとんでもない鈍感野郎として登場している藤井こと藤井 絢斗《ふじい あやと》は、中学3年生の時に転校して来て、高校生になった今でも一緒にバカ騒ぎできる気の合う仲良し男子。


……私の好きな人だ。


顔は中の中……至って普通。


良くも悪くもない、ごく稀に『ドストライク!』って女子がいなくもなさそうな、黒髪でパッチリ二重の黙ってたら爽やか可愛い系。


少し長めの前髪が鬱陶しくて前に一度、工作用のハサミで勝手にざっくり切って、かなり怒られた記憶がある。
< 10 / 280 >

この作品をシェア

pagetop