愛すべき、藤井。
教室の入口までたどり着いた私に、うめがニヤニヤと口元を緩めるから、私はなんのこっちゃ分からないと首を傾げる。
「藤井、完全に拗ねてるよ」
「拗ねてる?」
「そう見えない?私には立花に夏乃を取られて拗ねてるように見えるけど」
「そう?拗ねてるってよりは、なんて言うか……混乱してる感じに見える」
「混乱?」
「当たり前だと思ってたことが当たり前じゃなくなったことに、混乱してるだけだよ、藤井は」
もし仮に、拗ねてたりヤキモチ妬いてくれてたりしたとしても、それは私のことを"女の子"として、好きだからってよりは、
多分、友達を取られた……とか、姉弟を取られたとか……藤井の中ではそっち系の感情なんだろうと理解してしまっているから余計辛い。
"女として意識した"とか言いながら、藤井の中で"女"の私はきっと100%じゃない。
30%にも満たない気さえする。それくらい、意識の低い"女"だと思う。いや、言ってて悲しいけど。
「……ま、本当のところは藤井にしか分かんないけどさ。でも明らかに今までよりは前進してるよ、アンタたち」
「……そうかな。藤井の鈍ちんが治らない限り、私と藤井は一生このままだと思うよ」
「あー、それは言えてる」
てか、諦めよう諦めようって思ってるだけで、実際のところ1mmだって諦めがついてないし。