愛すべき、藤井。
いっそ、もっともっとアタックすればよかったのかな。押して押して押し倒したら、あんな鈍ちんの藤井でもさすがに少しは私にムラっと来たり……
しなそうだな、藤井は。
「おーし、揃ったか〜?始めるぞ」
空き教室に入れば、やっぱり気合い120%の担任が声高らかにリハの開始を告げた。
シンデレラと言えども、なんせシンデレラ役が私で王子役が藤井。
フェアリーゴッドマザーがうめと来たもんだ。
そりゃもう、台本だってギャグにギャグを重ねたほぼコメディシンデレラになってるんだけどさ。
それでもやっぱり、ラストには少しだけ見せ場というものを作らなくちゃいけないらしくて、
「伊藤と藤井の抱き合うシーンが、やっぱりイマイチぎこちねぇからな〜、あそこから練習スタートするか」
───ギクッ
やっぱりそう来たか。
シンデレラと王子様がめでたく結ばれるラストシーン。
オリジナル台本の中で、唯一甘いシーンだ。
つまり、私と藤井が抱き合って甘い言葉を囁き合うなんとも気持ち悪いシーンってわけ。
先生の言葉に、藤井とアイコンタクトでお互い『やっぱりな』の念を送り合い、仕方ないとばかりに前へ出た藤井に、諦めにも近いため息を一つこぼして私も前に出た。