愛すべき、藤井。



***



「打って〜走って〜〜ボール追いかけ〜♪♪」

「あ、よいしょ〜!!」



ガンガン鳴り響くミュージックは、私には一切わからない謎のノリの野球ソング。


音痴ではないけれど、決して上手くはない神田くんが大熱唱している横で、中学時代に野球部のマネをしていたうめはノリノリで合いの手を入れている。



……あれはあれで、ある意味2人の世界だ。



あれから、ボーッとしてばかりいる藤井を気にしながらも、藤井に買ってもらった焼きそばを4人で食べて、他クラスの展示を回って……。

スタンプラリーにも参加した。


時間はどんどん過ぎるのに、やっぱり藤井はボーッとしてばかりで、そんな藤井にまた苦しくなる私の心を、うめが気にかけてくれて……。


『しゃーない!奢りだ』とか言って、気前よくクレープなんか奢ってくれた。


藤井なんかより、よっぽどカッコイイんですけど。



いっそ、うめが男なら良かったのに。


そんなことを思いながら参加した閉会式で『演劇の部、優勝は2年3組のシンデレラです!!!』と言う教頭先生の言葉を聞いた時はクラス中が盛り上がった。



『よっしゃぁあ〜〜〜!!!』とみんなで抱き合って、恥ずかしかったけどやって良かったって心から思ったし、


『優勝した2年3組には、焼肉10万円分食べ放題券を贈呈します!』


続けた教頭の言葉に、クラス中が目を輝かせた。


< 183 / 280 >

この作品をシェア

pagetop