愛すべき、藤井。
だって、変なところは鈍感じゃない。
私が必死に隠していた『嫉妬』の感情を、藤井が今、いとも簡単に読み取ってしまったのだとしたら、悔しくて、情けなくて、醜くて……泣いてしまいそうだ。



それに、

『安心させようと……』


その言葉の意味は?
何で、私を安心させようと思ったの?


藤井は、私をどう思ってるのさ。



私を彼女に出来ないって言うなら、私のこと友達としてしか見れないって言うなら!!!


いっそ、もっと不安にさせてくれればいい。甘い言葉の一つもかけずに、私が嫉妬に苦しんでるのを見ながら勝ち誇ったように笑えばいい。


そしたら、藤井なんか!!って。むかつく!!って、人のことバカにして!!って。


嫌いになれるのに。


ちゃんと、前に進もうって思うのに。



「藤井はさ、結局……私とどうなりたいの?」

「……え?」

「私のこと、バカにしてる?」

「なんで、そうなんの?」


イライラを隠しきれない私の声に、藤井がやけに落ち着いた声を出すのが、余計むかついた。


ちょっと冷静になれよって言われてるみたいで、少し藤井の方が私よりも大人な気がして、すごく嫌だと思った。

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