愛すべき、藤井。
だけど、カラオケルームで"あんなこと"を言い放った私に対する藤井の気持ちは何一つ聞けないまま、藤井が香織ちゃんと帰ってるらしいという情報に素直すぎる夏乃ちゃんは、胸を痛めている。
……いや傷めている。
「そうだっけ?てか、藤井のこと避けてたらこうして話してないよ」
「……っ、ふざけんなよ!」
───ビクッ
「ちょ……ちょっと、おっきい声出さないでよ」
教室の片隅で、私を壁際に追いやりながら、少しだけ不機嫌そうに歪めた藤井の口が、キュッと結ばれた。
教室にいるクラスメイトたちが私たちを見ながらヒソヒソと噂をする。
その内容は、
『藤井、伊藤のこと振ったらしいよ』とか
『なのに、必要以上に伊藤に構う藤井って、無神経じゃね?』とか
『藤井、最低』とか
確かに、藤井は無神経だ。
私の気持ちを知る前も、知った今も。
何一つ私の気持ちを汲み取ってはくれないし、どうにか伝えようと頑張ってみても、ウルトラ鈍い藤井には伝わらない。
やっと伝わったかと思えば『ごめん』と来たもんだ。
私が今までどれだけのダメージを藤井に与えられたか……なんて、そりゃもう言葉では言い表せないほど。
でもさ。