愛すべき、藤井。

『だね。良かったよ、藤井とのキスシーンとかギャグ過ぎだし。ってか、藤井がキスとか想像出来ないし、絶対笑っちゃうもんね』


俺の前で、安心しきってる夏乃がムカついた。俺だって、男だぞ?って。そんな油断してると、どーなっても知らねぇぞ?って。


ほんのちょっと、脅かしてやるつもりだったのに。


『俺の前で、油断しすぎなんだよ』

『どう?俺とのキスシーンは想像出来た?』



あんな真っ赤になって、涙目で恥ずかしそうに俺を見上げてくる夏乃に、

そのくせ、頑張って強がる夏乃に、


『すす好きな人って!自惚れないでよ。もう好きじゃないかもしれないじゃん!1回告られたからって、いつまでも自分を好きでいてくれると思ってたら大間違いだからね?』



完全に、秒殺された。




理性なんて、簡単にぶっ飛んだ。



『だって俺、やっと夏乃のこと女として意識したのに。ここまで来て俺のこと諦めるのもったいなくね?』



思えばあの時から、俺は。


夏乃が俺から離れていかないように、必死に夏乃をつなぎ止めようとしてたのかもしれない。


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