愛すべき、藤井。



「たまに素直になればギャップ萌えってパターンもない寄りのありなのに」

「……ない寄りかよ」


自転車から降りながら、自転車に跨ったままの私にべっと舌を出して笑う藤井が憎いくらいに爽やかで、何がギャップ萌えだよ……そんなことあるわけないくせにって思いながらも胸は高鳴る。


じゃあさ、もしここで冗談めかして素直に好きだって言ったら?藤井のこと好きだって伝えたら、藤井はなんて言うの?

『冗談きついわばーか』って?

『ちょ、最新ネタすぎてしんどいわ』って?

『ギャップありすぎ萌え萌えキュン』って?


待って、何このノリ。
…………あれ、私今なら言えるんじゃない?


素直に、なれるんじゃない?

もしこれで、藤井がギャグに変えてきたら、私もそのギャグにのればいい。そしたらいつもみたいに笑ってバイバイして、また明日からも友達でいられる。


もし藤井が本気で受け止めてきたら、それはその時。


くだけても……いい。

もちろん『こんな時ばっかり変に勘付くな!』って本気のビンタはお見舞いするけど。

< 6 / 280 >

この作品をシェア

pagetop