奏でるものは 〜功介〜
第13章


5月の半ばを過ぎたある日曜日。


溜まり場で引退式のことを考えていた。

間もなく引退する。

俺にとっては本格的な受験勉強の開始だった。



その時、明らかに機嫌が悪い優が入ってきた。
龍も優もそれまでの体勢のまま顔だけで優を追いかけた。


いつもの静かさとは違う、誰かの気配を感じて待つような、張り詰めた静かさ。


静寂を破ったのは昌だった。



「どーか、したか……?」



優が難しい顔で唇をギュッと噛み、それからボソッと言った。


「歌織を怒らせた………」


何やってんだよ、と笑って言える雰囲気ではないらしい。

龍と昌と顔を見合わせて、何をしたんだ?と小さく息を吐いた。




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