奏でるものは 〜功介〜



映画が終わる頃、唯歌も目覚め、映画館を出てから、


「ゆっくりし過ぎて寝ちゃったね」

と言った唯歌と笑った。


それから歩いて、駅のところにあるショッピングモールに入った。


「何か欲しいものは?」

「何もないよ」

それなら俺があげたいものを買おう、と雑貨屋に入った。


「これは?……これは?」

色々見せても、頷かない。

和柄のポーチを2つ取って、どちらか選んで貰うことにした。


えー、と困っていたけど、強引に選ばせて、プレゼントした。


「勿体ないから使えないよ……でも、ありがとう」


勿体ないから、使えない……?

こんな和柄の物、使う場所がそうそうあるとは思えないけど……?


それでも、喜んでくれたようで、満足した。


二人で混雑した電車に乗って、帰った。



夜になって


“今日は、ありがとう。楽しかった”


相変わらずのシンプルなメッセージが届いた。

俺も、シンプルに返した。


“ゆっくり寝ろよ”




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