奏でるものは 〜功介〜


シャワー室に入って気付いた。


ここは……唯歌が最後に使った……?



思い切り、シャワー栓を回した。

熱めのシャワーが勢い良く体にあたる。



唯歌……可愛くて、綺麗で、賢くて、よく笑う……
でも、色っぽい顔を知ってるのは俺だけなんだ。


あれから、メッセージも届かないし、コウスケって呼ぶ声もしない。


あの時、ここで抱き締めてたら……



…………殴るよ…………



殴ってくれよ、抱き締めてくれよ。



唯歌を思って、泣いたのは初めてだった。


シャワーの飛沫で涙は消える。




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