副社長のいきなり求婚宣言!?
 ――“この方は今どちらに?”

 ――“ああ、彼女ならとっくに辞めてます。勤務体制に不満があったみたいで……”


 副社長様は、デザイン画を前にしたときに、亮介さんに訊ねたことを丁寧に教えてくれる。

 亮介さんが私のことをそんな風におざなりにあしらっていたのかということを知らされると、あのとき傷ついた自分に同情し、心の中で嘲ってしまった。


「“彼女”というなら、松本あやねなのか、森田あやねなのか……そういう名の女性が、それを描いたらしいと知った。彼にその女性についてを尋ねてもよかったが、所在が分からないなら聞いても仕方ないと思っていた。

 ただずっと、“あやね”という名の顔も知らない女性の存在だけが、俺の頭から離れなかった」


 外されていた視線をふっと上げてきた凛とした瞳に、心臓が脈を乱す。

 まるで、ずっと私のことを想っていたとでも告白されているような錯覚に、冷えていたはずの心が熱く震えた。


「きっと俺とは縁のない人だったんだと、諦めていたときだった。

 今度開かれる社内コンぺの資料の決裁に、“亜弥音”の判を見つけた。……今朝のことだ」


 ぞくっと鳥肌が立ったのは、何も恐怖からなどではない。
< 24 / 104 >

この作品をシェア

pagetop