副社長のいきなり求婚宣言!?
 勘違い、してしまいそうだ……


 凛とした瞳が、ひたすら真っ直ぐに見つめてくる。

 少し下がった目尻が、威厳を醸す副社長様の雰囲気を緩和しているんだろう。

 こんなに近くでお目にかかったことはなかったから、近寄りがたかったイメージが、今日でずいぶんと変わった。

 むしろ、こんなに長い時間見つめられて、凍った心の奥に閉じ込めていた私の中の女子が、本当に目を覚ましてくる。


「聞けば、設計とは無縁の部署に、希望配属されたらしいじゃないか。

 あれだけの才能を持っていながら、なぜ設計とは関わらないような仕事をしている?」


 高鳴りかけていた胸が、いぶかしげな言葉に苦しく締め付けられる。

 過去のみっともない自分が思い起こされて、息苦しくなってきた胸元を震える掌で小さく掴んだ。


 甘い言葉に目をくらませて、いいように扱われて……

 捨てられた結果、……手が動かなくなってしまった。


「何のために描けばいいのか、わからなくなったんです……」


 自分がそれまで、あの人に愛されたいがために描いていたんだと思い知って、不純な気持ちが織り込まれたデザインが……凄く汚く見えてしまったから。
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