副社長のいきなり求婚宣言!?
……副社長、私……


 薄く閉じる長いまつげの向こうで、いつもの凛とした瞳が色香に揺らめき、きゅんと啼いた胸が熱く熱を持った。

 鼻先同士が触れあう直前。

 つられるように瞼を閉じかけた隙間から見えたのは、縮まってきた距離をおもむろに止める美麗なお顔。

 あと少しの隙間を埋めに来ない副社長の陰った表情を、ぼうっとした目線でうかがった。


「……んな簡単に許すな、馬鹿」

「え……」


 目の前に溜め息を落とし、副社長はすっと距離を取る。

 期待をしてしまった胸は、あからさまにしゅんと音を立ててしぼんだ。


「枕営業でもやりかねないなお前は」


 ピチッと私のおでこを弾く長い指が、呆れたように叱咤する。


「そうやって前の男にも貢いでたんだろ。才能の無駄遣いだ馬鹿野郎」

「そ、そんなこと……」

「あるから言ってるんだろうが」


 的確に私の馬鹿さ加減をお諫めなさる副社長様に、むうとほっぺたを膨らせることだけが精一杯の抵抗だ。

 その膨れたほっぺたを遠慮なく長い指がむにと引っ張り、罰をくださった。
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