副社長のいきなり求婚宣言!?
 最初の三日くらいは、鬼の眼差しを崩すことができなかったけど、いい画が描けようになってくると、副社長は私にごほうびをくれるように、目元を崩して微笑んでくれた。

 その笑顔がまた、罪なのだ。

 お客様にだって、そんな柔らかさを見せることなんてないんじゃないかと思うくらい無邪気に砕ける。

 もしかしたら、私にだけ? なんて、勘違いしそうになるほど自然に溢される笑顔なのだ。


 でもそこは、ちゃんと線引きしておかないと、あとで痛い目を見ることはわかっている。

 副社長は、私をデザイン部門に引き上げようとしてくださっているだけ。

 誰かと幸せに暮らせる家、しか描けない私のために、毎日顔を会わせて、ご飯に連れていってくれたり、自宅に招いてくれたり、忙しい合間を縫って、結婚を前提にした恋人との時間を想像できるように協力していただいているだけだ。


 才能があると言ってくれた副社長の期待に応えるためにも、頑張って入賞しなくちゃ。

 でも……

 もし私が入賞できて、春からデザイン部門に異動することになったら……

 そのあとは……?
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