副社長のいきなり求婚宣言!?
 飛び付きたい衝動は当然抑え込むものの、心臓が壊れそうなほどの大きさで鼓動を打っている音は、もしかしたら副社長には伝わっているかもしれない。

 いや、いっそのこと、伝わっていてほしいとさえ思うほど、私は副社長に溺れているらしい。


 差し出されたのは、銅色のプレートが埋め込まれたクリスタル。

 賞状を持った手で受け取ると、温かな副社長の指が、私の手にふわりと触れた。

 そこから駆け抜けるときめきの熱。

 一瞬で全身を火照らせ、副社長への気持ちを溢れさせる。


「来春から、頑張って」

「はい……ありがとうございます……」


 社長にも聞こえるような労いの言葉を口にしながら、副社長はさりげなく私の手に何かを握らせた。

 公衆の面前で、秘密裏に行われる所作に、ときめきとは違うものが鼓動を強くする。

 賞状の陰で押し込まれた何かは、一歩下がってお辞儀をしながらしっかりと落とさないように握りしめた。


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