指切りげんまん。
馴れ初め

春らしい暖かな風が吹くこの日、

私は高校生になった。



同じ中学に通っていた人は少なく

友達もまだ、いない。



教室に入ると

自分の先を探す。

「あ、あった。」

山口だから相変わらず後ろの方で。



「おはよう!」

初めて声をかけてくれたのは

隣の席の吉岡怜哉(りょうや)くん。


「ぁ、おはよう。隣、よろしくね?」

そう言うと彼は


「よろしくな!山口さん!
でもさ、このクラス山口さん多いから
下の名前で呼びたいけど…
なんて読むの?」

よく間違われるこの名前。

今だけはこの名前でよかったとふと思ってしまった。


「ゆい、だよ。
読みづらいよね。」

私が苦笑いしていると

「すげー可愛い漢字だと思うな!
でも俺もよくりょうやじゃなくて
れいやって間違われるよ〜」

とおどけていた。


「え、!
れいやくんだと思ってた…
りょうやって読むんだね。」


彼となら、
打ち解けられそうな気がしてきた。


「ゆいはちゃんとりょうやってよんでな!」



そういった爽やかな彼の笑顔は

とても眩しかった。


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