ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
とりあえず、駅の周辺施設で食事でもしようということになったのだが。
門を出てそのまま数m歩いたところで、
「あらあら」
と、渉が少し驚いたように立ち止まった。
「なにか忘れ物ですか?」
隣を歩いていた葵の問いに、渉は無言で前を指さす。
すると少し離れた道路のわきのパーキングメーターに、見覚えのあるスポーツカーが停まっているではないか。そして車のドアが開き、中から蒼佑が降りてくる。
「あ」
一瞬息が止まりそうになる葵だが、隣の渉は「面白くなってきたじゃないの~」と、葵の耳元に顔を近づけてささやいた。
(いや、全然、面白くないんですけど……!)
これから渉とどういうふうに恋人を演じるか話し合う前に、蒼佑がやってくるのは想定外だった。
「――葵」
蒼佑に名前を呼ばれて、葵は唇を噛みしめる。葵はグッと、肩にかけた鞄の取っ手を握りしめて、蒼佑を見返す。
あれこれ考えても仕方ない。ここは正直に伝えて、帰ってもらうしかない。
「私、用事があるの。待ち伏せされても困ります」