ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

「ううん、いいのよ~」

 渉はウフフと笑って、それからスタスタと葵のもとに近づいて、じっと顔を見つめる。

「あんたちょっとリップくらいなおしなさいよ」
「えっ、あ、すみません」

 急いで来たので、確かにその考えには至らなかった。

「ほら、ここ座って」

 やはり美容部員は、美意識が高い。
 葵は端の席に座り、バッグからリップを取り出し、ブラシで丁寧に唇の上に乗せる。

「その色、ずっと使ってるわよね」

 その様子を眺めながら、渉がにっこりと笑った。

「はい。津田さんがお勧めしてくれた時に、最初に買ったんですよね。一年くらい前です」

 きれいな桜色のリップは、葵が初めて買ったものだ。それまで色付きのリップくらいしか使ったことがなかったのだが、CC化粧品のカウンターにいた渉に声を掛けられて以来のお気に入りだ。
 塗りなおして、顔がパッと華やかになった。

「ん、きれいになったわ」

 渉は満足そうにうなずいて、それから腕時計を見下ろした。

「じゃあ行きましょうか」
「はい」

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