gift
お酒を飲めない腹いせにチーズケーキを口に突っ込むと、湊くんがチラッと横目で見下ろしてきた。

「その体型でモリモリ食べてるから目立ってるよ」

「久し振りにオシャレしたんだから、たまに『誰よりキレイだよ』とか言ってよ!」

なんとか入ったシャンパンゴールドのワンピースは、腰から下がふわっと広がっている作りだけど、それでもスカートの前は明らかに持ち上がっている。
どうにも不恰好で気にしているのに、それをピンポイントで突いてくるとはヤなヤツだ。

7kgほど増えた体重でネクタイにぶら下がってやろうかと手を伸ばした時、主役がへらへらと笑顔でやってきた。
仕方ないので手を引っ込め、首だけ下げてお辞儀する。

「有坂さん、棋聖獲得おめでとうございます!」

「おめでとう」

テンションの随分違う私たちに、有坂棋聖は変わらないくだけた笑顔で笑った。

「ありがとうございます。あやめさんも大変な時なのに」

視線を私のお腹に向けて、棋聖は申し訳なさそうな顔をした。

「賞金300万なんですよね。出産祝いはずんでください」

私の下世話な発言に、今度は真剣な顔になる。

「出産祝いは了解しました。でも賞金は婚約指輪に使おうと思うんですけど、どうかな?」

「いいんじゃない?」

湊くんは本当にどうでもよさそうに答えるから、私が率直な意見を述べることにした。

「私なら現金そのまま積まれた方がクラッと来ます!」

紋付きを着込んだ身体を折り曲げて、有坂さんは爆笑する。

「それで済むなら貯金全額積むんだけどな」

有坂さんはせっせと料理を盛り付ける師匠の方向を、微笑みととともに見つめた。

「ち、ちなみに、それってどれくらいのタワーになりますか?」

「え? あれ? どうだろう? しばらく残額の確認してないからわからないな」

羽織から出た腕を組む様子は真剣で、誤魔化しではなく本当に知らないのだろうと思える。
チマチマ通帳記帳している私が虚しくなりそうだ。
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