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湊くんは存在そのものが謎だけど、その経歴にも謎が多い。
二十六歳という年齢から、転職してきたと思っていたのに、聞いてみると就職するのは初めてだという。
しかも三流四流でも大卒が多いうちの会社で、最終学歴は高卒。

「高校卒業してから、今まで何してたの?」

休憩スペースで一緒になったとき、おやつ代わりに聞いてみたことがある。

「別に。何も」

学歴は湊くんのコンプレックスだったのか、愛想のない顔から更に表情を消して、まずそうにコーヒーをすすった。
メガネが一瞬、ふわりと曇る。

「もしかして大学中退?」

「いや、大学は受験もしてない」

「世界放浪?」

「日本から出たことない」

「あ、わかった! ずーーっと高校を留年してたんじゃない?」

ふんっと鼻息だけで否定されて、そのあとは呼びかけても頑なに聞こえないフリをされた。

仕方がないので、湊くんがトイレに寄るのを確認して、一足先に課に戻った私は、ヤツの引き出しに入っている蛍光ペンのキャップを全部バラバラに入れ換えてやった。

「このエネルギー、何か別のものに向けたら?」

ひとつずつキャップを入れ直す姿を見たら、手間を惜しまず嫌がらせしてよかった、と満足感に顔が緩む。

経歴に関しては、本人が語らないので真実はわからないながら、「病気で長い間入院していたのだろう」という見方が社内では浸透していた。
たしかに色の白さや生活感のない妙にきれいな手に、普通の社会生活を送ってきた気配は感じられない。
よく食べるし、毎日出勤して咳ひとつしないけれど、いつかバッタリ倒れたりするのだろうか。
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