愛されたかった、好きだった。
「よろしく、私は…」
すっと口の前に彼の人差し指が持ってこられていて、指から彼にへと視線をあげる。
「紘ちゃんでしょ?
せっかくの縁なんだし仲良くしようね!」
果たしてこんな王子様みたいな人と面識などあっただろうか。
まず、去年男子と話してすらいないと思う。
「あはは、なんでって顔してるね。
紘ちゃん可愛いーって男子達が言ってたよ」
「お世辞でも嬉しいよありがとう」
きっと彼は天然タラシというやつなのだろう、全く照れていない。
言い慣れてる感が半端じゃないし。
なら、私も相手することなどないだろう。
「照れ屋さんなんだね」
くしゃりと頭を撫でられて私達に注目していた女子はキャーと悲鳴をあげる。
「仁太遊びすぎじゃないかな?
俺の彼女にちょっかいかけないでくれる?」
「秋斗、スマイルスマイル」
ニッと両頬に人差し指を当てる姿にすら薔薇が咲いている。
「ね〜、仁太は結局秋斗呼んで何したかったの〜?」
どこから取り出したのか棒付きキャンディーをくらえた綾乃くんはコテンと首を傾げ、その姿にも周りの人達は悲鳴をあげる。
「そうだった、鈴音がね何電話切ってんだって怒ってたよ」