生き続ける意味 **番外編**




翔はあたしの目をじっと見つめると、口を開いた。



「…そういうの、やめろよ。」



「…そういうのって?」



急に空気が張り詰めた気がした。



「心配かけてとか、迷惑かけてとか…」


ズキリ、と心臓が動いた。



「ごめんっ……ほんとに。」


抑えきれなくて、涙が溢れた。

けど、翔は首を振った。




「違う。心配かけてごめん、とか迷惑かけてるからとか、そういうの、やめろよ。」



え…?どういうこと…


翔は、ベッドに腰をかけると、あたしの手をそっと握った。

あたたかくて、大きい。



「遠慮すんな。気も使うな。…いい加減、怒る。」


怒る、って言ってる割には、あたしの手を握る翔の手が優しくて、瞳が真っ直ぐだった。



「こんなにずっといるのに、まだ信じてくれない?…俺は、桜のことが大切なんだ。

…桜のことを、迷惑とかめんどくさいとか思ったことない。1度も。」




「…翔?」


さっきとはまた違う涙が頬を伝った。

ポロポロと溢れて、手の甲に落ちる。



「…病気がなんだよ。体調不良がなんだよ。そんなの関係ねぇよ。

桜は桜だ。どんだけ心配かけられたって、どんだけ大変だって、俺は桜のことをずっとおもってる。」



…翔?

涙でぐちゃぐちゃで、目の前がぼやけるけど、翔の瞳がうっすら濡れていた。赤くなっていた。



あたしが翔を見つめてると、ふと目を逸らし、その瞬間背中に手を回され、抱きしめられた。



「っ…え…」


あったかくて、翔の心臓の音が聞こえる。ドクドク高鳴って、あたしの心臓の音もうるさい。



「俺は、ずっと病気と闘った桜がすごいと思う。

…今だってそうだろ?慣れない学校も、部活も…必死で闘ってるんだろ?自分の気持ちとも、自分の体とも…。そんな桜を俺は知ってるから。

どんな事があっても、笑顔を絶やさないで、周りに気を使って、優しくて…一生懸命な桜が、本当に好きなんだ。」



どくんっ


あったかくて、嬉しくて、胸が今までの中で1番高鳴った。

体が熱くて、心臓の音が翔に伝わりそう。



あたし、今日だけでどれだけ泣いてるんだろうね。


翔は、そっとあたしを話すと、向き合った。

じっと瞳を見つめられ、微笑んだ。



「桜、俺と付き合ってください。」








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