生き続ける意味 **番外編**
怖くて、怖くて、抱きついた。
目の前の翔に。
今のあたしに恥ずかしさなんてなくて、ただ怖かった。
泣いているあたしに、翔はビックリしながらも、優しく抱きしめてくれていた。
「桜、大丈夫か?」
心配そうにあたしに話しかけた。
けど、なんにも答えられなくて、伝えようとした言葉がぜんぶ鳴き声に変わってしまう。
怖い。怖い。
いつだって、あたしの胸の中はざわついてて、本当に引き裂けそうになった。
「…翔っ」
「ん?」
「迷惑ばっかかけてごめん。
病気ばっか、体調崩してばっかりいてごめん。
心配かけて、迷惑ばっか…」
「桜。」
その途端、頭をポンポンとされた。
「ねぇ、こっち向いて。」
翔の声に、あたしは首を振った。
「いいから。」
翔から引き離され、ほっぺを掴まれ、グイッて顔を上げられた。
「ふふ…ひさしぶり、桜。」
泣きじゃくって、顔がぐちゃぐちゃのはず。けど、そんなあたしを大切そうに、笑って言う翔がいた。
あたしは急に恥ずかしくなって俯いた。
「…ひさ、しぶりっ…」
けど、また顔をグイッて上げられて。
「お前、日本語下手になったな。」
そう言って、笑われた。
下手じゃないしっ。
「来てくれたの?ありがとう。」
翔は近くの椅子に座り、テーブルの上に茶色い大きめの封筒とスーパーの袋を置いた。
「あの後から学校来ねーし、心配だったんだよ。」
「…ごめん。」
翔は腕を組んだ。
「謝るなって。桜は悪くないんだから。それより、大丈夫か?
っていうか、ごめん、急に来たからさ。」
あたしは首を振った。
かけ布団を胸のところまで挙げる。
「そんなことない!…大丈夫!元気だからっ!」
口元をキュッと力入れて、笑ってみせた。
少しの間が空いて、翔がつぶやいた。
「…嘘つくなよ。」
怒っているような、冷たいような、そんな声。
…え?
翔の様子が、なんだかおかしかった。いつもと違う。
…きっと、怒ってる。
幼なじみのあたしには、1発でわかった。
「…翔?」
どうして、怒ってるの…??