生き続ける意味 **番外編**
お盆の上には、お粥とお味噌汁、おかず、牛乳があった。
誰が見ても量は少ないんだけど、これでも今のあたしには食べ切れるかって量。
「はぁーい」
気の抜けた返事をし、スプーンを手に取った。
「あ、そういえば昨日、翔くん来てたよね?」
「えぇ!」
肩がビクッとした。
「え、あ…そうなの。お見舞いで…」
茜さんは笑った。
「よかったわね。久しぶりじゃない?会うの。」
「う、うん!」
我ながら、見事な慌てぶり。
…というか、別に悪いことしてるわけじゃないんだけども。
茜さんは少しだけ不思議そうに首をかしげた。
「…桜ちゃん、やっぱり結構体調悪い?
いつもなら、お見舞いの時の話、楽しそうに話すのに…」
…茜さんの観察力、だれか止めて。
あたしは苦笑いして首を振った。
「ううん、大丈夫!すこーし、昨日より悪いかなー?っていうか…」
苦し紛れの言い訳。
嘘です。体調は昨日からなんの変わりはありません。
茜さんは心配そうな顔をすると、
「そう…ゆっくりしててね。亮樹先生には伝えとくから」
はい…って、え?
「じゃあ、また後でくるからね。」
「え、いや待ってくださ…」
むなしくも閉まる扉。
…変な言い訳するんじゃなかった。
嘘なんです。別に体調に変わりはなくて…
変わったことといえば、あたしと翔の関係…
幼なじみが彼氏彼女になっただけで…
ん?別に幼なじみなことは変わりないから、幼なじみ兼彼氏彼女みたいな?
…ふふふ、なんかめっちゃいいんだけど!!
ひとりでにやけながら、スープを食べた。