めはくちほどに
河上は社食のオムライスのスプーンをふらふらさせながら、私の返事を待った。
「あれは、体調が悪くてふらふらしてるところに、偶然副社長が通りかかって最寄り駅まで送ってくれたの」
「ふーん」
「……ってことにしておいて」
「了解」
にやっと笑う。河上は嘘を見抜くのが得意だ。ああ、上位の人たちって本当に怖い。
「で、本当は?」
「この前飲み会あったじゃない? あの後、副社長、家に来たんだよね」
正確には連れてこさせられた、だけれど。
ぽかん、と音がするくらい口が開いた。
河上さん、口から米を出さないでくださいね。