めはくちほどに
「え!? まじで!?」
「わっ、米が」
「あの家に副社長が!?」
周りに人が少なくて良かった。河上の声は意外に通ることを今知った。
「そっかあ……紺野家の皆に会ったんだ……」
「そんな感慨深く言わなくても」
「や、会えたなら、運良いなって」
ナプキンでテーブルと口の周りを拭った河上は、スプーンを置く。私はお弁当箱の蓋を閉めた。
腕時計は昼休みがあと20分あることを示している。
「運が良いって、家に来たら皆いるからね」