お茶にしましょうか

『信じていったって、駄目なものは駄目に決まっている』



過去に深海魚の君に向って、そう吐いてしまったことがあった。

しかし、そのような俺に彼女は呆れず、真剣に俺を諭してくれた。

それに加えて、だ。

これほどまでに身近なチームメイトから、実例を学んでいる。

人は人を、見限ることがよくある。

しかし、努力という者は人を、見限ることはない。

周りに存在する人たちから学び、俺が辿り着いた結論だ。

結論などといわずとも皆、わかりきっていることだろう。

だからこそ、皆が努力した自身よりも下回らない様、必死になれるのだ、俺も。



「落ち着いてな!」

「バッター集中っ!!」

「ひとつずつ、一つずついこう!」

「バックは任せろぉ!!」



セカンドを守る我らが主将が、先頭を切れば、それに続いて順に声かけを始めた。

俺もそれに続く。



「打たせてこい!」



俺の立つこの位置から、努力家なピッチャーへまで届けばいい。

そして、後になって気がついたが「打たせてこい!」とは、俺にしては随分、出過ぎたことを叫んでしまったものだ。

俺という奴は、高校で野球生活を2年半送ってきて、まさかとは思うが、今頃になってから変化が出てきたのだろうか。

それとも、もう一人の努力家の影響だろうか。

ふと頭に、彼女の顔が浮かんだ。
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