お茶にしましょうか
すると、マネージャーの彼女は長い、長い溜息を吐いたのです。
そして、後ろを振り返らずに私を見たままで、弱々しく聞こえてきた声に向かって、冷たく言い放ちました。
「だから、自分で言えば?」
彼女の言葉に江波くんがびくつくのが見え、その後も彼は、何かを躊躇うかの様にして、おどおどしてみえました。
彼女はそのような彼の元へ、戻っていきました。
そして、次の瞬間には、マネージャーの彼女は、江波くんの背中を音が鳴る程に強く叩いたのです。
私は思わず、顔を顰めてしまいました。
とても痛そうでした。
江波くんが衝撃に対して、反射的に「いっ」と声を漏らしておられましたから。
自身の手が届かない背中に向かって、擦ろうとしながら、江波くんは椅子に座ったままでこちらを向きました。
そして、躊躇ういつも通りの様子で、黙り込んだ後に、やっと声を発しました。
「あ、あの…良かったらでいいんですけど、この後に何もなければ、勉強…一緒にやりませんか?」
私の返事は言わずとも、はい、に決まっておりました。
「お邪魔しても、本当によろしいのですか?」
「だ、大丈夫ですよ、俺は」
そう言うと江波くんは、マネージャーの彼女へちらっ、と目をやりました。
そして、それに応える様に、彼女もこうおっしゃいました。
「私もいいですよ。教えるのは、嫌いじゃないので。あなたもしごいてあげますから」
私はどうやら、大変な場所へ迷い込んでしまったようです。
さあ、楽しい勉強の幕開けです。