ノンストップラブ
部屋に着くまでのびしょ濡れ状態に私は泣きたくなった。

服が体に張り付くことがこんなにもストレスになるものだとは

思いもよらないことであった。

床が濡れるのを気にしながら浴室に直行し中で脱いだ。

シャワーの熱いしぶきを肩から浴びて気持ちが少しずつ和らいできた。

取りあえずザッと流しただけでコックをひねってシャワーを止めた。

部屋で着替えるとなんだか目が冴えて

今夜は筆が進みそうだとワクワクしてきた。

バッグを左わきに抱えて玄関へ向かった。

自分でもおかしいと思いつつこの雨の中をまた外出することに

頭より先に体が動いてしまい駅前のカフェを目指した。

カランカランとドアを鳴らして店に入った。

「いらっしゃい!」

「マスター、奥いい?」

「誠ちゃん、こんな夜も来てくれるなんて嬉しいよ。」

マスターは片手で奥の席を差した。

「いつもの?」

「はい。」

昼間と違い、夜の店内は薄暗く各テーブルにはキャンドルの炎が小さく揺れて

しっとりと落ち着いた雰囲気になる。

外のザーザー降りの雨の音もBGMにしか思えないほどに。
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