ノンストップラブ
カフェ・モンドは15人分の席しかない手狭な店だ。

こんな雨の日でも

夜はバー代わりに一杯飲みに立ち寄るサラリーマンやカップルがいた。

10時近くでも席は埋まっていた。

カウンター席に5人と2人掛けのテーブルが5つである。

私は奥に一人で陣取っていた。

カランとドアベルが鳴った。

マスターの声が今夜はあいにく満席だと告げていた。

雨はいつ止むかと思いつつ私はつらつらとペンを進めた。

今書いているのは振った女によりを戻されそうになって

呼び出されたバーで困惑しているイケメン弁護士のセリフだ。

「いい加減に気づけよ。」

このセリフが使いたかった。

「とにかく私は承知していませんから。」

プライド高い女ってこういうセリフよね。

「つきまとうのは君らしくないと思うし、第一フィアンセ候補がズラリって聞いた。」

「関係ないわ。私が決めることよ。」

「そんなことを言っていられるのも今の内だ。親があっての何とかだからね。」

良家のお嬢さまは遊べないっていうのが掟かしらね。ふふ。

「誠ちゃん。」

といきなりマスターの声が耳元に響いた。
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