ノンストップラブ
彼はすでに相当飲んだ後のようだと推測した。

今にもまぶたを閉じて寝てしまいそうに疲れた様子と無口な感じと

きちんとした身なりでそれなりのファッションセンスが見てとれた。

今夜最後のアルコールを楽しんでいるのか

流れでもう一杯欲しかったのか定かではないが

何か思うものがあるように感じた。

それは重いものだと思えた。

なぜならまだ30歳前後のサラリーマンらしきごく普通の男性が

背負わなければならないような何かが今の彼に見合っていないように思えたからだ。

「何か俺の顔についてる?」

私が観察していることに気づいたからか突然口を開いた。

「すみません。何でもないです。ついつい癖で人間観察してしまう方なので。」

「へぇ、じゃ、今の俺はどう見える?どんな風に見えるんだ?」

私は静かな彼のトーンに嬉しくなった。

元々低音好きなため声フェチな部分があって他人には言えない嗜好持ちだ。

「抱えたものが余りにも大きくて重くてなかなか前に進んでいけない何かをお持ちのように見えました。」

キッパリハッキリと凝縮した言葉で伝えた。

彼は気分を害してなさそうだ。

それよりも心持ち明るい表情になっている。

カラリとグラスの中の氷が動いた。

「上手い言い方するな。OLじゃないだろ。」

「ライターです。」

「ライターか。うなずけるよ。」

一言二言話しただけでこんなにも簡単に私を喜ばせることができる相手を凝視した。

「何?そんなに可哀そうに見えるのか?」

「違います。びっくりしただけです。」

「変わった女だな。もっと顔よく見せて。」
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