ノンストップラブ
小さなテーブル越しに彼は手を伸ばしてきた。

私は前髪を長めにして顔を隠し

セミロングはこの湿度のせいで縮れ放題でいつもよりも顔全体が髪で覆われていた。

ましてカフェ内の暗さと小さなキャンドルの明りでは顔の輪郭すら判別できない。

彼はふわりと私の前髪を横に分けて

スッとあごに手を添えそっと顔を持ち上げた。

コンビニでさえ客と目線を合わせないようにしている私が

今は目の前に座った見知らぬ男性としっかり目を合わせた。

恥ずかしさよりも興味が先に私をそうさせた。

彼が私を見てどう思うかが今最も重要であった。

「ホッとしたよ。どんなお子ちゃまかと心配した。」

「キャハハハ。」

私は喉を鳴らして笑った。

「なんでそこで笑う?」

「だって、おっかしいんだもん。」

「まったくどうかしてるよ。」

水割りの残りをゴクリと飲んで彼は満足そうな顔をした。

「で、こんな時間に書くのか?」

「はい、雨でずぶ濡れになったから頭が冴えてしまって。」

「全く理解できないな。」

「そうなんですか?」

「よかったら、明日また会えない?昼間は?」

「大抵ここにいます。」

「は~ん、常連か。わかった。昼頃来るよ。」

「帰りますか?」

「明日ちゃんと出直したい。」

「わかりました。お待ちしています。」

「白石優。君は?」

「柏木誠です。」

「セイちゃんね。マスターがそう呼んでた。」

おやすみと言って白石さんはカフェを出て行った。

カランとドアベルを一回鳴らして。

これは一体なんだろう。

こんな出会いってあるのか。

私は思うままノートにペンを走らせた。

今夜はやっぱり冴え切って眠れそうにない。

はっきりとそう思った。
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