ノンストップラブ
「ご両親は一緒にお住まいなの?」

「いいえ、小さい頃事故で亡くしてからはおば夫婦に引き取られました。」

「まあ、それは苦労があったと思うわ。でもあなたを見ればわかります。おばさまやおじさまに大切に育てられたことがね。」

「えっ?」

「あなたがしっかりとした人だと私にはすぐわかりました。おばさまやおじさまに感謝しなければとも思いましたよ。あなたもそう思うでしょ?」

「はい、思います。」

俺には誠の目が一瞬潤んだように見えた。

「あらあらごめんなさい。しんみりしてしまったわね。」

「いいえ、お気遣いをありがとうございます。」

「またお会いしたいわ。房江のお式にぜひ来てちょうだい。約束ね。」

「はい、喜んでお伺いいたします。」

それを聞いて俺は姉の式にまた誠を連れ出すことに渋った。

「オホホ、あなたに会えて良かったわ。今日はなんていい日かしら。」

祖母の話しは終わったようだ。

「誠、行こう。」と俺は彼女に声をかけた。

「優、お待ちなさい。あなたにも話しがあるの。ここにかけて。誠さんもそのままで聞いてちょうだい。」

俺は誠に目配せした。

うんざりした顔で椅子にかけ脚を組んだ。

「とにかく、あなたには一度しっかり話しをしたいの。私も先は長くないんだからあなたがちゃんとしないと心残りなのよ。私が言いたいことわかってくれるわね。」

「いいえ、おばあ様とは考え方が違うので俺は自分の思うように生きたい。それだけだ。」

「今日は誠さんに免じてこのくらいにしておきましょう。行っていいわ。」

「失礼します。」と誠は軽く会釈をして席を立った。

俺は彼女の後を追った。

「まったく困った子ね。まあいいわ。」

祖母の次の一手に俺たちは引き裂かれそうになる未来が待っていた。
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