花びらが散る頃に 〜恋愛短編集〜
「美味しい?」

「ああ」

あたしが作った肉じゃがを頬張る大輝。

美味しそうに食べてくれて嬉しかった。

もう、死んでもいいやって思った。

まあ、死ぬんだけども。

あたしは、ボーッとテレビを観ているときに大輝にこっち来いっとジェスチャーされ、ベランダに向かう大輝に着いていった。

「どうしたの?」

「いや、何か最後だから2人でいたいなって思って」

「え…」

そんなこと言われたら期待してしまうよ。

「俺の話聞いてもらってもいいか?」

「うん。いいよ?」

「俺さ、好きな人いるんだ」

「うん。知ってる」

「誰だか分かるか?」

大輝の目は至って真剣だ。

そんな真剣な目をされたら笑えなくなる。

「分かんないよ」

正直なことを言う。

だって本当に誰だか分からないだもの。

もしかしたらあたしかも…という期待が段々と募っていく。

「だよな。最後だから言うよ」

大輝は息を吸い、呼吸を整えた。

「おまえが好きだ」

その瞬間、時間が止まったのかと思った。

嬉しいのと悲しい感情が一気に来る。

だって、今日死ぬんだよ?あたし達。

こんなことってあり得るの?

もっと、一緒にいたかったな。

「うん。あたしも大輝のことが好き。大好き!」

あたしは、今までで1番の笑顔だったと思う。

それと同時に涙が、ぶわっと溢れてきた。

その涙は、嬉し涙なのか悲し涙なのかは分からない。

「なぁ、空見てみろよ」

空を見ると、星が夜空1面に輝いていた。

「うわぁ、綺麗」

「だな」

「ねぇ、大輝大好き」

「ああ、俺も琴音のこと大好きだよ」

最後の大輝はとても優しい口調だった。

今までとはかけ離れるくらいに。

そんな大輝が好き。



fin
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