眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。

ズバズバと言ってちょっとだけ怖い、私なら何も言えなくなりそうな威圧さがある。こちらが何か言う前に畳みかけるように強い言葉が飛んでくる。

社員は首から社員証を下げて移動するはずなのに、彼女は胸元に社員証をつけている。黒のタータンチェックに首に巻く黒のスカーフ。受付嬢だと理解できた。

会社の華だけあって、怖いけれどモデルみたいな体型に小さな顔に大きな瞳。睫毛も下品じゃないぐらいの長さで、薄い色の唇なのに大人っぽい。

「はい。それで要件は?」
 片野さんは慣れているのか、謝罪することなく受け流しているように見える。
「いい。社長が一人でいるなら、チャンスだし行くわ」

綺麗にまとまった髪を触りながら、私を挑発的に見る。

「派遣の分際で秘書の位置に居られていいよね。私も社長の隣にいられるなら受付より派遣でもいいわ」
「えっと」
「じゃあ、社長が私を待ってるから」

ご機嫌に手を振って社長の居る部屋へ入っていく。

「彼女はえーっと崎田さんです。正直に言ってしまうだけで悪意はないので、気にしないでください。口調は強いですが、影口を言わないで本人に言うのである意味、清々しい方です」

「そう、なんですか」

 ちょっと驚いてしまったけれど、片野さんは聞き流したようでまたお孫さんの話を始めた。驚いたけれど、眞井さんも最初怖いと感じたけれど今は大丈夫だし人は見た目じゃないのは分かってる。

なのでまだあの睨まれたときの怖さで心臓がバクバクしていたけれど、抑えて片野さんのお孫さんの写真に集中した。


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