俺はいつも一歩遅くて…。

「はぁ…はぁ…はぁ…」


クソっ

凛はどこだ…?


鈴木のやつ‼︎
確かにあいつもバスの中で
凛のこと好きだって言ってたけど…



何で目を離した?!

クソっ






後探してない所は…この空中庭園だけ…





どこだ…?







「蒼井さんっ‼︎」




ドキッ




蒼井は…凛の苗字…




あの茂みの向こうからだ。


そーっと覗くと

そこには凛と鈴木がいた。



クソ…遅かったか。




「ごめんね。こんな夜に呼び出して」
「うぅん。大丈夫…」



シーン…



お互い緊張しているのか静かなままだ。



鈴木のやつ…覚えてろよっ


そう思いつつ出るに出て行けず
俺はずっと見守ってた。




「あの…鈴木くん…話って…?」
小さな凛の声が
そっと静かな空中庭園に響く。


「あ。うん。俺…実は…。」


凛が告白される…
そう思うと邪魔をしたくてたまらなくなった



あ…

よく見ると
鈴木の額は汗ばんで
手をぎゅっと握りしめている。


緊張…してるんだな。



そりゃそうだよな。

好きな奴に告白するんだもんな。



好きな奴に…


断られたらもう同じようには
戻れないかもしれないのに…
なんて馬鹿な奴…





馬鹿な…奴…






ズキンっ




鈴木の事を馬鹿にすればするほど
自分の胸が痛むのは何でだ?



「おれ‼︎蒼井の事が好きだ‼︎」



サァーっと夜風に吹かれるのと同時に
その声がここまでちゃんと聴こえてきた。



「え…あの……あ、ありがとう…!」


顔を赤くしながらも凛がそう答えた。


その顔は今まで長い間見てきた
どの顔でも無く。

初めて見る顔だった。

赤くしながらも
驚きと嬉しさに入り混じった顔…。


何だよその顔…待てよ。まさかっ‼︎
サァッと寒気がするのを感じた。


「俺と…付き合ってください‼︎」

鈴木は、顔を真っ赤にしながらも、
深々と頭を下げて言った。


俺とは違って、勇気を振り絞って
あいつは凛に告白したんだ…。






俺はただ…


凛の返事が怖くて、それでも気になって…

仕方がなかった。


< 9 / 26 >

この作品をシェア

pagetop