リナリア
やっぱり
友達といても、彼氏といても、
心の喪失感は消えなかった。

喪失感というか、なんというか。

心が急に取り憑かれたみたいな。

自分では考えないようにしていても、
いつの間にか兄のことで
頭がいっぱいだった。

元気がない私に友達や彼氏は
気付いてくれて、元気付けてくれたけど、

兄はたまに帰ってきても、
私に他愛もない話をして、笑ってる。


なにも気付いてない。

なにも気付いてくれない。

どうしたの?
その一言が欲しかった。

私を少しでも見て欲しい。

それだけの気持ちだった。





兄には遂に結婚の文字が見えてきた。

わかっていた。

兄は生半可な気持ちで
同棲していた訳ではないことを。

全部に一生懸命な兄だから。

わかってるよ。妹だもん。
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