秘密の糸Season1㊤
【梨絵side】

あたしは雪都からの電話を切った。


「ごめんね…。雪都。」



三田倉さんがいなかった数日間、


ボーッとしてミスばかりくり返す雪都を、あたしはずっと見ていた。


三田倉さんと一緒にいた時の雪都は、 


楽しそうで、あたしが見たことない笑顔をしていた。


あたしは…寂しくて嫉妬していた。


三田倉さんにすごく嫉妬した。


三田倉さんが来なければ…。


…なんて、そんな事も考えてしまった…。


二人の間に卑劣が入った時も、少し喜んでしまった…。


だけど、ウジウジする雪都は見たくない。


だからあたしは、背中を押した。


…なんてそんなの嘘。 


そんなのただの綺麗事で、


雪都の為じゃない。


全部、あたしの為だ。


こうすれば、雪都があたしに振り向いてくれるんじゃないかって…。


ズルい考えをしたんだ…。あたしは…。


だから…雪都に感謝されるおぼえなんてない。 

 
雪都からの電話は嬉しかったけど、罪悪感を感じた。


好きなのに、あたしはいつも素直になれない…。


本当、自分が嫌になる。


「あーあ…何やってんだろ…。あたし…。」


その時涙が流れた。


何でもっと、早く行動しなかったんだろう…。


あの時の気持ちに気づいて、告白していれば…。


今頃…何か変わっていたのかもしれないのに…。


あたしはふと《あの頃の記憶》を思い出した。
< 363 / 642 >

この作品をシェア

pagetop